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シルク・マガジン

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愛媛の2大養蚕地をめぐる その2:大洲市 瀧本養蚕

この記事は、2021年6月、7月に取材した内容を元にまとめています

愛媛県内60%の繭生産量を支える瀧本養蚕

大洲地方(現大洲市)において、古くからの伝統産業であった養蚕。 「おおず繭」というブランドで大洲ええモンセレクションにも登録されるなどその品質には定評があり、現在でも愛媛県内の繭の生産量は大洲市産が約60%を占めています。

驚くことに、その繭を作っているのは、大洲市に2戸だけ残る養蚕農家さんなのです。 明治20年代頃に養蚕業を始めた瀧本養蚕の4代目瀧本亀六さんと、その兄の瀧本吉良さん。 亀六さんは約20万匹の蚕を育て、吉良さんと合わせて年間約2トンの繭を出荷しています。瀧本養蚕では全国的に見ても大規模な養蚕業を営み、愛媛県の養蚕業を支えています。

今年79歳になる亀六さんのもとには、2年前から孫の慎吾さんの姿。高齢化が進む養蚕農家の中でもおそらく一番の若手である26歳、瀧本養蚕を受け継ぐ若き5代目です。 慎吾さんの養蚕業への就農には、亀六さんはじめ愛媛シルクの皆が喜び、シルク界の希望の光のような存在になっています。

寝る時間も削る、養蚕農家の一か月

瀧本養蚕では年に4回、5月から11月の間にお蚕さんを飼育する蚕飼(こがい)を行い繭を生産しています。 養蚕の1か月は、養蚕農家にとって最も忙しい時期。 養蚕では、まず蚕種(さんしゅ)とよばれる蚕の卵を製造する種屋さんから3齢(孵化して10日ほどの時期)の小さな蚕を迎えるところからはじまります。 蚕を育てる約2週間の間、帰宅は夜の21時頃となり、早朝4時にはまた蚕に餌の桑の葉を与えなければなりません。

農薬を使用せず自然栽培で育てた桑の葉を作るのも養蚕農家の仕事です。桑の葉を毎日2回収穫し、1日3回蚕に与え続けます。 1食で400キロほど食べるという桑の葉を、天候にかかわらず絶えず収穫し、軽トラックで運ぶのは重労働です。

蚕舎は24~27度の一定の温度に常に保たれ、蚕の成長に合わせてレーンを伸ばしながら、同じように栄養をとり成長できるように気を配るのだそう。 取材中、蚕を手に取りその状態を眺める慎吾さんの様子をよく見ました。

室内には、蚕が桑の葉を食べる音がサーサーと雨音のように静かに鳴り響いています。 食べて食べて食べて、脱皮して。蚕が5齢と呼ばれる繭を作る直前の成長段階に入ると、体重は孵化時の1万倍にもなるそうです。

やがて、蚕の上へ上へと登る習性を使って、繭を作るための足場である「まぶし」に蚕を移す「上蔟(じょうぞく)」と呼ばれる工程に入ります。 まぶしの中で、蚕は蛹になるのですが、このとき、天敵から身を守るために糸を吐き繭を作るのです。 糸を吐き出すのは1回だけ。3日から4日をかけて吐き続け、その長さは1500メートルにもなるのだそうです。

-大洲ええもんセレクション(瀧本養蚕のページ)から転載

蛹になって約2週間後、繭は農協などに出荷され、製糸場へと送られていきます。 繭が美しい生糸、シルクに生まれ変わる頃には、瀧本養蚕では桑畑の整理や草刈り、蚕舎の消毒など、次の繭を迎える準備がはじまっています。
蚕のことを「お蚕さん」と親しみを込めて呼び、自身の寝る間も削って寄り添い大切に育てる養蚕農家。 慎吾さんは「お世話をちゃんとした分だけいい繭になってくれる。お蚕さんへの愛情もある。無事に出荷されたらこちらは収入になるし、持ちつ持たれつ、お互いが助け合い求め合う存在だと思います」と話してくれました。 愛媛の養蚕の伝統は、いまもこうして人から人へと想いと共に継承されています。

大洲ええもんセレクション(瀧本養蚕のページ)
https://www.ozu-eemon.com/approved-business-operator/takimoto-yousan/

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